「父親が親権を取るのは、限りなく不可能に近いですね」
無料相談で、弁護士はそう言った。
別の事務所でも言われた。
その次でも言われた。
判で押したように、全員が同じことを言う。
・・・誰一人、「やってみましょう」とは言わなかった。
俺が欲しかったその一言は、どの弁護士からも貰えなかった。
弁護士を何件も回って、増えたのは不信感だけだった
離婚を決めて、まず弁護士に相談した。
無料相談をやってる事務所を、何件も回った。
返ってくる言葉は、どこも同じ。
「父親の親権は厳しい」
「現実を見た方がいい」
「お子さんのためにも」
プロが言うんだから、統計的にはそうなんだろう。
頭ではわかる。
でも、会うたびに心が削られていく。
誰も俺の側に立ってくれない感覚。
ちなみに無料相談って、事務所によって当たり外れがエグい。
親身に話を聞いてくれるところもあれば、5分で「無理ですね」と切り上げて、あとは依頼を促すだけのところもある。
何件も回ると、相手が「この案件、金になるか」で態度を変えてるのが透けて見えてくる。
・・・まあ、向こうも商売だからな。
わかってる。
わかってるけど、こっちは人生かかってんだよ。
揺れたのは「子ども」じゃない。「どう戦うか」だ
先に言っておくが、子どもを諦めるなんて選択肢は、最初から1ミリもなかった。
それは絶対だ。
俺が揺れたのは、別のところだ。
どうやって戦うか。
弁護士に頼む金は、ないわけじゃない。
でも潤沢でもない。
調停の着手金だけで30万超。
裁判に移行すれば、さらに数十万。
勝てば成功報酬も乗る。
ただでさえ財産分与は、年収が高い俺の方が不利になる。
出ていく金が決まってる上に、さらに数十万、下手すりゃ数百万。
「・・・これ、どうすっかなぁ」
かといって、自分でやる本人訴訟は、めちゃくちゃ時間を取られると聞く。
平日に裁判所だ書類作成だとなれば、当然、会社には面白くないと思われる。
そして俺の会社は、そういうことにやいのやいの言ってくるタイプだ(この話は後でする。マジで腹が立つから)。
金を取るか。
時間を取るか。
会社の機嫌を取るか。
頭の中で、天秤がぐらぐら揺れてた。
・・・いや、待てよ。
俺が一番大事なのは何だ・・・
会社か?
違う。
キャリアか?
違う。
子どもだろうが。
天秤に乗せるものを、間違えてた。
金とか時間とか会社の顔色とか、そんなもんと子どもを比べてた自分が、ちょっと恥ずかしくなった。
「やったるぜ、本人訴訟!!」
俺の心の中で方針が決まった瞬間。
俺が選んだのは、自分で戦うことだった。
会社に相談して、俺は完全に火がついた
さっき「後で話す」と言った会社の件だ。
藁にもすがる思いで、会社にも相談した。
今の状況、思い、どう進めていきたいか。
返ってきた言葉を、今でも一字一句覚えている。
「仕事がおざなりになるのであれば、それは許容できない」
「金で解決できるなら弁護士を雇えばいい」
「お前が親権を諦めても、子どもは母親のもとに行く。子供にとってはどっちにいても幸せは変わらないだろう」
「親権を取ったら、今まで通りには働けない。子どもの世話があるからな。キャリアがもったいない」
・・・。
キャリアがもったいない、ね。
そうか。会社にとって俺は、子どもの父親である前に、労働力なんだな。
このとき、2つのことが俺の中で確定した。
ひとつ。絶対に親権を取ってやる。
もうひとつ。この会社を出て、いつか独立してやる。
皮肉なもんで、俺を一番奮い立たせたのは、味方の励ましじゃなくて、心ない言葉の方だった。人間、見返したい相手がいると強くなる。ありがとう、とは死んでも言わんが。
ちなみに・・・
結局本人訴訟で対応を進めていったわけだが、会社からは部下の管理業務から外され、その分多くのタスクをこなすよう指示を受けた。
俺は訴訟と仕事と両立して、全力で取り組んだ。自己評価ではあるが、仕事の品質は落としていないし、やり切ったと自負している。
しかし会社は評価してくれなかった。
仕事の実績よりも、訴訟を選んだという時点で、評価がどうなるかはもう決まっていたようだ。
更に、会社の同僚からも、
「あいつは仕事全くしていない」
「一人だけ在宅勤務やりまくってて卑怯だ」
「会社に来る頻度が少ないからコミュニケーションが取れない」
などと陰口をたたかれていたらしい。直接自分が耳にしたことではないので本当かどうかわからないが。
仕事もしていたし、リモートとはいえコミュニケーションがいつでも取れるような体制は敷いていた。
在宅勤務については・・・男手一つで2人の子供を育てなきゃいけないんだから許してくれよと思ったが、所詮俺が特殊な状況になっているだけで周りのみんなからすれば関係のないことだと、よく理解できた。
「本人訴訟」という選択肢を、俺は知っていた
弁護士に頼まず、自分で裁判をやる。
本人訴訟だ。
実は、この存在を俺は知っていた。
最初に知ったのは、あるリーガルドラマだ。
弁護士モノなのに、登場人物が弁護士を立てずに自分で法廷に立つシーンがあって、「あ、自分でできるのか」と頭の片隅に残ってた。
しかも俺には、小さな実戦経験が2回あった。
ひとつは、ぼったくりに遭ったときの少額訴訟。
昔、飲み屋でぼったくられたことがあり、納得いかなくて少額訴訟を起こした。
名古屋と大阪で別々にぼったくられてる時点で学習能力を疑われそうだが、その話はまた別の機会に。
とにかく、そのとき「裁判、自分でできるじゃん」を体感した。
もうひとつは、交通事故の保険金があまりに低くて、弁護士基準で払えと起こした訴訟。
保険会社は当然保険金を低くしたいので、弁護士基準などの情報は伝えずにかなり低く見積もりを提示してくる。
弁護士基準にするためには裁判を起こさなければいけないが、これも弁護士に依頼せずとも実施する子ができて・・・
・・・閑話休題。本筋から逸れていきそうなので話を戻す。
とにかく、この2回の経験があったから、離婚調停も婚姻費用調停も、自分でやることに違和感がなかった。
素人がいきなり本人訴訟、じゃなかったわけだ。下地はあった。
ちなみに、本人訴訟をしようと思った動機は、当然不当な支払いを取り返したり適正な保険金額にしたいという思いはあったが、一番の動機がもう一つ。
「裁判というものを経験してみたい!なんかかっこいいじゃん!」
そんな、ある種不純なモチベーションでやってみたという経緯である。
何事も経験であるというのが私の考え方なので、実際に役に立つ日が来て何よりである。
実際にこれらの訴訟をしていく中で面白い話が・・・
・・・閑話休題part2。
直ぐ話がそれて申し訳ない。
——で、実際どう戦ったのか。
1年やって弁護士をどう見たか。
その話は次に書いた。
敷かれたレールを降りた先で、また書く。
「父親に親権は無理だ」と言われた人が。
証拠のない言葉と毎日向き合っている人が。
弁護士費用が払えなくて、それでも諦めたくない人が。
その人に向けて、これからも書く。
フォローしておいてもらえると、更新のたびに届く。
Co-Redesign|敷かれたレールを降り、自ら歩き出す人生設計

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